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Edooはソ−シャルビジネスの取り組みを通して社会課題を解決しようとしています。

一方、デザイナーやクリエーターの皆さんは、デザインやクリエイティブを通して新しいイノベーションを起こし、ソーシャルインパクトを創出しておられます。すなわち、デザイン、クリエイティブは社会課題を解決するツールであります。

また、最近はビジネスの世界においてもデザイン思考を経営に取り入れよう、という動きが活発になってきており、経営とデザインの融合が注目されています。

そこで、今回は福岡を代表するデザインディレクターである、かねこしんぞう氏のデザイン会社である株式会社インデックスプラス代表取締役かねこしんぞう氏を訪問し、「デザイン思考が社会課題を解決する可能性」についてお聞きし、意見交換をさせていただきました。

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Shinzo Kaneko

デザインディレクター

  • 株式会社インデックスプラス 代表取締役
  • 株式会社デザインプログラム 代表取締役
  • 一般社団法人福岡デザインアクション 専務理事
  • 一般社団法人福岡デンマーク協会 名誉顧問
  • 福岡県産業デザイン協議会 理事
  • ダーウィン有限責任事業組合 代表組合員
  • デザイン特区有限責任事業組合 代表組合員
  • 学校法人双葉学園 福岡デザイン専門学校 理事

株式会社インデックスプラス

  • 〒810-0073福岡市中央区
    舞鶴3-1-30祐徳ビル2号館3F
  • TEL 092-711-1262
  • FAX 092-731-2803
  • http://www.indexplus.jp/

●プロフィール

1948年福岡生まれ、72年東京デザイナー学院グラフィックデザイン科卒業、74年インデックス創業、77年有限会社インデックス設立、99年有限会社インデックス・コムズ社名変更、07年株式会社インデックス商号変更

●実績

博多大丸、ソラリアプラザ、小倉そごう、ショッパーズ専門店街、イムズ、八ちゃん堂、パナソニックコミュニケーションズ、九州電力、全日空、ドコモ九州、福岡シティ銀行、大成建設、福岡地所、西鉄、西日本新聞社、霧島酒造、アクロス福岡、福岡市、福岡県、JR九州、マキハウス、太洋技研

●受賞歴・コレクション

福岡広告協会賞・金賞、銀賞、銅賞、特別賞、TCC(東京コピーライターズクラブ)新人賞受賞作(アートディレクター)、宮崎日々新聞社広告賞・金賞、宮崎県都市景観サインデザイン賞・大賞、ゲシュタルトウング美術館チューリッヒ、マレーシア美術館、インドネシア・バンドン大学、九州産業大学

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「デザイン思考が社会課題を解決する可能性」

DSC06616井原啓登氏(以下、井原):最近、「デザイン思考」が話題になっていますが、デザイナーの立場としては「デザイン思考」とは当たり前のこととして身についてるので、頭で考えずに自然にやれていることなのでしょうか?

かねこしんぞう氏(以下、かねこ):デザインの世界でも、用語としてかなり出てきていますが、普段の仕事をしている時には意外とこういうことは考えていません。本来ならば、我々デザイナー側も一度立ち止まって、自らがやっていることを整理して理論的に落とし込む取り組みをすべきだと思います。

また、誰に対する要望か?という点も考える必要があります。例えばデザインの世界で企業とかショップのCI計画(コーポレートアイデンティティ)とかVI計画(ビジュアルアイデンティティ)という言い方をしますが、そのような専門用語だと、我々デザイナーの仲間内は通じるけども、一般の人やクライアントにお話する時には、少し言葉として難しいので、ブランディングという言葉を代りに使うわけです。

企業、商品、製品あるいはサービスのブランドというのはこういう感じだなぁというイメージを持って発信すると、一般の人にとってもブランドという言葉が一般的なので、共通認識になるわけですね。

誰かに対してメッセージを伝える時の共通用語として、デザイン思考や社会課題があると思います。デザインというのは「課題を解決する手段」の一つと思っています。

DSC06682-001井原:特に最近は「デザイン思考」が注目されています。「デザイン思考とビジネス」をテーマとした本が多数発刊されています。アメリカのデザイン会社IDEOは、コンサルティングとデザインを融合した新しいアプローチで、お客様の課題を解決している。デザイン的な思考というのが、実際ビジネスの現場で課題解決に活用できるのではないか。そのような流れになってきています。

かねこ:デザイン自体がモノづくりとかサービス提供の付加価値だ、という時代が以前ありました。ところが、デザインそのものの本質が経営資源になりえるという、いわゆる「デザインエクイティ」の考えが生み出され、さらに「ブランドエクイティ」を活用していくという新しい概念に変化していくんですね。

「ブランドエクイティ」は蓄積されるものです。僕らがこれまで何十年もデザインの仕事をしていた中で、社会とデザインクリエイティブ関わりでエポックメイキングだったのが西武百貨店の取り組みだったのです。西武百貨店を中心としたセゾングループの経営者である堤清二さんが「デザインの必然性」というか、デザインの重要度を考えて、どうやってデザインを企業活動や社会活動に活用したらいいのだろうかということを、当時の最先端のクリエイターたちと実験的にやってみたのです。その中に、グラフィックデザイナーの田中一光さん、建築家の磯崎新さんや安藤忠雄さんなどがいました。ライフクリエーターの浜野安宏さんや、そんな時代を一行の言葉で言い表す糸井重里さんのようなコピーライターが出現するといった、社会が感性型社会課題デザインを求めていた時代があったのですね。

ところが、やはり社会の動きがもっと早かった。セゾングループの企業環境が厳しくなってきて、堤さんという経営者の存在そのものが危うくなったときに、当然、そのような組み合わせも一度分解しなければならなくなる。一人の有能な経営者の考え方と、それを受ける一人のクリエイターとの組み合わせで社会が動いていた時代が終わって、システム的な活動基盤を持つ大手広告会社のトップクリエイターが集団で取り組むようになったわけです。その「集団構成のシステム的な活動」がここまで変化して来ている流れだと思うんですね。

井原:集団で取り組むからこそ、解決できる課題が広がってきたということですね。

かねこ:そうですね。西武セゾンは、単なる百貨店として販売を拡大するだけではなく、社会要求の価値観を変えたところがあります。ライフスタイルを変えた。「おいしい生活」で、それまでの日本の持っていた古い価値感から社会を変えた。

井原:80年代にセゾングループの一大ブームが起こりましたね。バブル経済と重なり社会の価値観が変わっていく時期でした。


かねこ:
価値観が成熟したら、やはり次の時代に移行しなきゃいけない。その時一人のクリエイターの役割が終わるわけです。当時は、日本という社会が成熟していって、大衆から分衆の時代へというような博報堂総研が唱えた「分衆」という概念が社会の主流となって動き出した時代です。高度成長期のモノを大量に作って大量に売り、国民みんなが同じモノを持つのが理想だった時代から、人と違うモノを持ちたいという価値変化です。画一化された価値から個の価値の時代へ。製造業も販売業も変わらなければいけない時に、クリエイティブのシステムが変わったということです。

井原:クリエイティブのシステムが変わったというのは、個から集団へという流れでしょうか?

かねこ:集団というよりも、連係型と考えていいのではないでしょうか。領域を超えたクリエイターの連携でことにあたります。

井原:時代の流れも後押しして、クリエイティブのスタイルが個人プレーから連携プレーに変化したということですね。

かねこ:そのくらい社会を取り巻く環境が複雑化したという感じです。そのような中で、クリエイターが連携プレーをしなければいけない、という予感は、僕も福岡で仕事やっていて、もう15年ぐらい前になんとなく気づいていた。

今、僕も様々な活動をしていますが、活動のスタートはまさに連係型です。建築家やグラフィックデザイナーなど、様々な分野のクリエイターでチームを作り全体で課題に対応していく形にしないと、一つの分野だけの縦割りの形で対応していっても自ずと限界がある。

全てがそれで解決できるとは言えないにしても、考え方の一つの選択肢として、そのような路線を実践してきたわけです。

井原:その連携プレーになったことによって、デザイナーの方たちの課題解決に対するアプローチは変わってきたのでしょうか?もしそうであるとしたら、どのように変わってきたのでしょうか?

かねこ:例えば、個の時は、クリエイターであればクリエイティブな分野だけみていればよかったのですが、連携の時代は「マネジメント」や「テクノロジー」といった要素を加味していく必要がでてきました。ただ、かっこいいデザインとか、ビジュアルが面白い的なレベルの、デザインだけの問題ではありません。チーム編成された各専門家によって、生活者や顧客指向と動向をきちんと洞察した上で解決にあたるようなマネジメント的な仕組みづくりが要求されるようになったのです。

DSC06613井原:クリエイティブの世界に新しい要素としてマネジメントが加わったわけですね。そうすると、色々なバックグラウンドをお持ちの方々を一つの目的に向かって、まとめて、行動させていかなければないといったプロジェクトマネジメント的なことが求められます。そのようなポジションに相当する人も、また新しく役割として登場してきたのでしょうか?

かねこ:連携プレーで課題解決にあたるためには、全員が並列の立ち位置にいても機能しないので、プロデューサーやディレクターというポジションが必要になります。チームをピラミッド構造にしていかないと指示が下に行き届きません。ある案件ではグラフィックデザイナーがヘッドになるけども、違う案件では建築家がヘッドになるとか。臨機応変に変化出来るような仕組みでチーム編成をしていくという形はダイナミックで面白いです。

このような手法は会社のような縦割り組織の中ではできません。だから、ユニットでグループ化したような組織の方が自由なフォーメーションができます。そこが秘訣だと思います。

井原:プロデューサーやディレクターといったポジションの方はクリエイティブ以外の能力も当然求められますね。異なるスキルを持つ人材を上手くマネジメントする能力が求められます。

かねこ:チーム編成でお互いの能力を引き出し合います。参加したクリエイターも、チーム編成が変わることによって、自分の能力を伸ばすこともあるし、自分にできないことも見えてきます。また、どのようにチームとして対応するかは、課題解決を依頼したクライアントとの関係の中で見えてきます。

井原:クライアントの課題があり、デザイナーの皆さんはクリエイティブな成果物を生み出していかれます。その成果物は、クリエイターの方が自由気ままに生み出していかれるのでしょうか、それともあくまでもクライアントの想定範囲内で生み出していかれるのでしょうか?あるいはもっと発散させて、クライアントの想定範囲外でも生み出そうとされるのでしょうか?

かねこ:そこはチーム編成をするプロデューサーの力量が出るところです。構成するメンバーではみ出したがる人と収まる人をうまく入れることが必要です。この案件だったら、このひと入れたら絶対はみ出すねという方をあえて入れたりですね(笑)。素直にそのまま作っちゃう人とか色々なクセがある中で、違うキャラクターの人達を同じチームに入れちゃうことでバランスを取ります。結局のところは、ディレクターがチームをコントロールするので、これは良いこれは悪いという制御はしながらも、クライアントが要求していることに近づけていきます。やはり、突拍子のないアイディアってあるじゃないですか。5時間も一生懸命うんうん唸っても出ない人もいるのに、もう瞬間的に出す人もいるわけです。思考が暴れた人や緻密な人が同じグループで議論するとお互い気付くんですね。はみ出した人にとっては、はみ出したままじゃ採用してくれないというのは分かってくるわけです。はみ出したアイディアは考えるのですが、どこかもうちょっと抑えないと、最終的にはやっぱり納得されないなぁということに気付きます。真面目な人にとっては、いくら何でも真面目すぎるよね、それだったら誰でも考えるかもしれないねって言われるじゃないですか。そうならないように真面目な人はもっと自分で自分を焚きつけて、面白くするという作業をします。つまり、お互い良いところを取り合ったりするということです。

DSC06704井原:はみ出した人っていうのは、やはりグループの中には絶対必要ということですね。

デザイン思考においては、クライアンが持つ課題に対し、現状が徹底的に分析されます。クリエイターは現場に行かれたり、フィールドワークされたりします。そしてチームで議論する時は、そこではみ出るのも、もう大歓迎という形で、色々な議論をしていくわけですね。

かねこ:現状分析はしっかりとやります。その上でディレクターは、暴れ系や緻密系のどのようなメンバーで組み合わせようかなって考えます。インパクトを目的に考えた場合は特に大事です。だから、クライアントが誰に発注するか選ぶ時に、ある程度名を成して旬な人というのは、相当はみ出していますね。はみ出したままじゃ、クライアントが納得できないというのはディレクターしか分からないことなのです。だから、ディレクターにとっては、ここが一番難しくもあり、面白いところなのです。はみ出しを否定せずにじゃじゃ馬を乗りこなすみたいな、そういうのがあって(笑)。

井原:様々な意見が出て、議論が発散していく中で、次のプロセスとしては、発散したものをまとめていかないといけないですね。収束という言い方をしますね。そこはどのようなアプローチをとられているのでしょうか?発散しすぎてしまって、もう収拾がつかないような議論やアイデアになっていることもあるわけですよね。

かねこ:その場合は、アイデアをグルーピングします。クライアントに提示する時には、ある程度の案を絞っておかないと先方も迷うし、こちらも本命案と本命じゃないけど一歩先をゆく案をいくつか残しておいて、その他の案を捨てます。そして出来るだけクライアントを納得させる努力をして本命案に持っていきます。しかし、あらゆるクリエイティブ活動には目的がありますから、本質をしっかりと捉えないといけません。そしてその本質論というのは、今回の対談のテーマである「社会課題」に行き着きます。

井原:最近のデザインのコンサルティング会社というのは、会社の課題だけじゃなくて、例えば、途上国の課題も解決します。だから、デザイン的な考え方は、企業だけではなく、社会全般の課題に活用できるのではないかと考えています。

常日頃、数字を見ていたり定量的なことを考えていたりするビジネスマンは左脳思考でデザイン的な思考に慣れていません。一方で、クリエイターは感情や感覚や直感といった、いわゆる右脳思考が命です。実際、そのような右脳思考を社会の課題の解決のために活用するためには、どのようなアプローチがあるのでしょうか?

DSC06660かねこ:文化庁の委託事業で、野村総研が、社会課題の解決に貢献するようなデザインや文化芸術活動の事例研究の調査をしています。しかし、文化芸術とは言うものの、内容としては経済、人口、居住、健康福祉、人権、教育問題などの社会全体を括るような構造的な問題点があげてあり、続いてそれらを解決する課題と事例が報告されています。それらの諸問題を、都市・地域のブランディングという方法で解析するこが重要です。これからの日本は経済のパイが小さくなっていくので、いかに産業を再編成し国や地域を活性化させるかに尽きると思います。

井原:人口減少によって経済規模が縮小していくこれからの日本で、産業の活性化と地域の活性化はキーワードです。

かねこ:そうですね。経産省のさまざまな政策、いわゆるデザイン政策は、ある意味、社会課題をどう解決するかということです。最初は「モノづくり」から始まりました。世界に負けないものづくりみたいなところからスタートして、1990年代から2000年になるくらいまでが「デザインの価値」。マーケットがあって、それに対応できるようなものをしっかり作っていかなきゃいけないよねということです。当時はまだ、モノづくりの方に足が向いていたのですが、それから段々と感性デザインの方向になってきて、「感性価値創造イニシアティブ」となって行きます。そして今では「クールジャパン」です。

しかし、日本は、もう一度モノづくり産業の再整備をしないと、中国、台湾、韓国、アジア諸国などの工業新興国との競争に負けてしまうという、大きな危機感を持たざるを得ないところに来ています。クールジャパン政策は、世界に日本の何かしら選ばれたものを持っていこうとしているわけですが、選ばれたものというのは、既にあるもので育成されたものではありません。本来必要な国内産業の活性化からズレているのが現状です。今話題の無人機ドローンのような技術は日本の一番のお家芸だったはずです。動力源の高性能のモーター、慣性の制御技術、さまざまなセンサー機能、高感度のカメラなど、本当は日本が一番良いものを持っているはずなのに、組み合わせて一つの商品にすることが日本は出遅れてしまい中国の企業にシェアを取られてしまいました。

もう一度原点に戻って、今の日本が持つ良い技術を集約して次世代の世界商品を作る方向に持っていかないと、日本のベンチャーが意欲をなくしてしまう。

そのためにはきちんとビジネスにしていくための支援も必要で、日本全体を網羅した地域の集合体としてのデザイン戦略が必要です。その中で地域ブランディングの使命があるとすれば、我々も出来るだけやっていきたいと思います。地域で作ったものを海外に紹介していくこともできます。そういった中からどこか世界に飛び出るような企業が出てきて、何かしら世界のスタンダードを日本が作るみたいな、そういうデザイン思考を持ったメーカーが出てきてほしいですね。

DSC06685井原:デザイン思考というのは、これから様々な組織でも必要になると思います。ただ、これまでは左脳を使うような合理的で定量的な考え方が組織運営の要でしたので、いざデザイン思考を使うと言っても、一足飛びにはなかなか難しいところが、今の組織が抱えている課題じゃないかなと考えます。

かねこ:それは右脳と左脳の機能の違いが広告作りにおける、はみ出し案を出す人と、真面目な案の対比なのかもしれません。だから、ビジネスを立案する際に、はみ出し案を出すことです。デザインではなくて、ビジネスの案として出すことです。慎重にしっかり石橋を叩く人とのバランスを取っていかないと、たぶんダメだろうと思います。

井原:そのような意味では、はみ出し案も慎重案も両方とも必要だということですね。

かねこ:両方とも必要ですね。でも、はみ出した案を抑えるような経営をしてたらいけないと思います。昔は経営者がはみ出してたような気がするんですけどね。

井原:昭和の高度成長期の頃の経営者はまさにそうですよね。SONYやサントリーなど、はみ出した経営者がいる組織が大きく成長していきました。

かねこ:井深大と盛田昭夫や、鳥井信治郎と佐治敬三との関係のようにツートップで基礎を築いた企業が多くありましたね。

井原:はみ出した考え方を発想することが今の日本の組織は弱いような気がしますね。これだけ世の中がどんどん変わってきていますので、新しいもの、革新的なものを次々と出していかないと取り残される時代になっています。もちろん左脳も大事でしょうけど、右脳的なデザイン的な考え方というのが求められている時代に来ていると感じます。私の場合は、ソーシャルビジネスという現場にいて、バングラディシュで雇用を創出するプロジェクトを進めようとしています。そのようなところにも、デザイン的な考え方をどんどん使っていく必要があるのではないかと思います。

かねこさんは、これまえ、デザイン的な考え方の限界を感じられたことはおありですか?デザイナー、クリエイターとして問題解決にあたっていく中で、何か大きな壁に直面されたこととか、チャレンジだったことはおありですか?

DSC06607かねこ:もちろん、あります。壁も多いです。例えば、我々の見る視点から、このクライアントのこういう商品や、こういったサービスはこうあるべきだなぁと思っても、クライアントに何十年という歴史がバックにあるため、なかなか変えられないとか、なかなか変化を求めることがないところは、日本の企業によくあるような気がしています。

井原:リスクを取りたくないと現状維持に落ち着きます。組織のトップがイノベーティブな考え方に理解があれば、また違ってくるとは思いますが、組織の中の一部門の方がリスクを取るってなかなか難しいです。失敗した場合、自分の立場がどうなるのかとか考えた場合、変化を求めることはなかなか難しいような気がします。

かねこ:例えば、車産業は、ある社会的な範疇の中で商品そのものが進化をする可能性を持っているだけに人が移動する交通手段としては普遍的な産業です。ところが、家電の場合は社会情勢によっては非常に寿命が短いこともあります。それはラジオやテレビに始まって現代社会の情報機器もうかうかとしておられません。機能は一緒かもしれませんが素材や技術はどんどん変わっていきます。

マクドナルドやケンタッキーフライドチキンでも世界が納得する発想があって、あるところまで個人の創業者のパーソナリティで作っても、その後は、やはり限界があります。組織を大きくできる人を経営層に入れ、M&Aで世界企業に成長していったわけで、そのような企業成長を、日本の外食産業と比較するとかなり差がある。10年前か20年前にあったファミリーレストランの名前ってもう忘れてるぐらいにありますよね(笑)。1970年代すかいらーくとロイヤルという二大外食産業が伸びて海外まで進出するところまで来たのですが、そこから足踏みしてしまって、どういう仕組みが足りなかったのかなぁと思ったりします。出発点は地方や地域からでも世界企業に成長することは可能だし、そのためのデザイン環境もある程度は整っているのが日本の強みですからね。

地域の活性をデザインで解決する中で、地域の優位性と欠点をきちんと見なければいけません。今、デザイン思考という概念で産業や企業活動を組み立てていくアプローチが求められているのではないでしょうか。

井原:ここでいうデザインというのは、ものというより、形に表れない流れを表しています。

かねこ:そういうことですね。今お話ししたような国の政策があって、ものは作られて、価値として動く。しかし日本のデザイン産業の規模は非常にマーケットが小さいのです。だから、国も政策的な支援が出来ないでいます。そしてクールジャパン政策として海外に打って出るインバウンドビジネス的なものの方が主流となっています。しかし、クールジャパンで出しているもの自体は、あまり我々のデザインの範疇に入ってないものが多くなっています。このように世の中で理想と現実が微妙にずれているところを、我々としてはどのように対処していこうかというところです。デザイン思考で社会課題を解決していくソーシャルデザインの取り組みを、ビジネスとして成立するようなモデルにしていくことがこれからの日本の将来のためになります。

井原:私たちのソーシャルビジネスについて、かねこさんからコメントを頂けますでしょうか。

かねこ:私たちに経験はありませんが、ソーシャルビジネスには大変関心を持っています。しっかりと参画したいという気持ちがあります。福岡という地元地域を活動拠点として、活性化に協力して行きたいと思っています。

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井原:先ほど、様々なスキルやバックグラウンドを持つ人材が同じチームにいればいるほど、良いアウトプットが出るというお話がありました。私もその今後、このような活動を続けていく中で、かねこさんたちが普段考えておられているようなデザイン思考のアプローチを取り入れていきたいと考えています。平均を見るのではなくて、極端なところも見る。はみ出した人やアイデアを大事にする、あるいは対象に寄り添うといった現場主義です。本日はありがとうございました。